第19回「目からウロコがはぎ取れる!経営に役立つポイント」

~キャッシュの重要性~

こんにちは! エースラボの布川昭文です。

普段は「出張経理課長」として、契約企業様の日々の経理処理や毎月の状態把握に欠かせない月次試算表作成のお手伝い、さらには資金繰りや、資金調達に関わる支援業務を行っております。

第8回、第9回でキャッシュフロー計算書について触れましたが、今回は改めて資金の大切さについて触れたいと思います。

極端な話、赤字でも資金が手元にあれば会社を継続させることができます。

一方、事業で黒字を計上していても手元資金が無くなってしまうと会社は事業を継続することが出来なくなってしまいます。いわゆる「黒字倒産」という現象です。

私も以前に所属していた企業が民事再生を申請(倒産)しましたが、本当に毎日が綱渡り状態でした。

お金が入金になった時点で、すぐに支払に充てるといった日々。毎日、払出票と振込票を持参して開店前の銀行に行き、シャッターが開くのを待って対応に追われていました。

あの時の辛かった日々の夢を未だにみることがあります…。

1.最近の倒産事情

 最近の倒産事情を確認してみたところ、2024年上半期では負債額1,000万円以上の倒産企業が全国で5,000件近くあり、年間で10,000件を超えるペースで推移しているとの記事が東京商工リサーチから発表されていました。

負債額1,000万円未満の倒産数も相当数に上っており、主な要因としては、円安に伴う物価高、人手不足、ゼロゼロ融資の返済などが挙げられています。

物価高により材料代の支払ができない、人材不足で会社が稼働せずに売上が落ち込んでしまう、融資の返済期限がきても原資が手元にないので支払えないといったことが原因のようです。

2.キャッシュの重要性

企業にとってのキャッシュの重要性を以下に説明します。

  1. 日常業務の運営 (日々の支払いに)
    • キャッシュは企業の日常生活を円滑に運営するために不可欠です。
    • 給与の支払い、仕入れ代金の支払い、設備やサービスの購入など、日常的な支出にキャッシュが必要です。
  2. 流動性の確保 (予期せぬ出費の備えに)
    • キャッシュは流動資産の中で最も即座に利用可能な形態であり、企業が緊急時に迅速に対応するためにはキャッシュの保持が重要です。
    • 急な修繕費やその他の予期せぬ経費に対応するといった予期せぬ支出や、売掛金の回収の遅れといった収入の遅延に対するための安全弁となります。
  3. 信用力の向上 (より大きな借入が可能に)
    • 十分なキャッシュを保有している企業は信用力が高まり、取引先や金融機関からの信頼を得やすくなります。これにより、より有利な条件での取引や融資が可能になります。
  4. 投資と成長の機会 (成長するにはカネが要る)
    • キャッシュが豊富にある企業は、成長機会や投資機会に対して迅速に対応できます。
    • 新しい市場への進出、設備の拡充、研究開発などの成長戦略を実行するためにはキャッシュが必要になります。
  5. リスク管理 (何が起こるかわからない)
    • 経済環境の変動や市場の不確実性に対してキャッシュは重要なリスク管理ツールとなります。キャッシュがあれば、企業は不況や業績の悪化に対して柔軟に対応でき、生き残る確率が高まります。
  6. 株主価値の最大化 (株主に報いるためにも)
    • キャッシュフローの健全性は企業の財政状態を反映し、株主価値の向上に寄与します。安定したキャッシュフローは、配当の支払、再投資を通じて株主価値を高めます。

3.キャッシュフロー経営

 会社経営を行う上で、帳簿上の数字を追うだけでは現実のキャッシュとの違いに気が付くのが遅くなってしまう可能性があります。

キャッシュフロー経営とは、企業の財務状況を管理し、資金の流れを重視する経営手法です。

キャッシュフローとは、企業が一定期間に受け取る現金収入(キャッシュインフロー)と支払う現金支出(キャッシュアウトフロー)の差額を指します。

  1. キャッシュフロー計算書の作成と分析
    • キャッシュフロー計算書は、企業の現金の流れを示す重要な財務報告書で、以下の三つのセクションに分かれています。
      • 営業活動によるキャッシュフロー
        • 本業でどれだけ稼げたかを表す指標で、売上高、仕入、買掛金、給与支払などが含まれます。
      • 投資活動によるキャッシュフロー
        • 将来の価値創造のための投資で、固定資産の取得や売却、投資有価証券の売却などが含まれます。
      • 財務活動によるキャッシュフロー
        • 企業の財務活動に関連する現金の受入と支出を表し、新株発行や株主への配当などが含まれます。
  2. キャッシュフローの予測と管理
    • 将来のキャッシュフローを予測し、適切な資金計画を立てることが重要です。これにより、資金繰りのリスクを減らし、必要な時に適切な資金を確保できます。
  3. 資金繰の最適化
    • キャッシュフロー経営では、収支のタイミングを調整することが求められます。例えば、支払いを遅らせることで現金を手元に残し、急な出費に備えることができます。
  4. 利益とキャッシュフローの関係の理解
    • 利益が出ている企業でも、キャッシュフローが悪化すると経営が困難になることがあります。逆に、利益が少なくてもキャッシュフローが健全であれば、企業は成長し続けることが可能です。
  5. キャッシュフロー経営の利点
    1. 財務安定性の向上:適切な資金管理により、急な支出や景気変動に対応しやすくなり       ます。
    2. 投資判断の迅速化:現金の流れを把握することで、どのタイミングで投資を行うべき   かを判断しやすくなります。
    3. 借入依存の軽減:キャッシュフローが健全であれば、無理な借入を避けることができ   ます。
    4. 経営透明性の向上:キャッシュフローの状況を把握することで、経営状況の透明性が 高まり、ステークホルダーの信頼を得やすくなります。
  6. 実例と成功事例
    • キャッシュフロー経営を成功させた企業の例として、トヨタ自動車が挙げられます。トヨタは、長年にわたり強固なキャッシュフロー管理を行い、リーマンショックやコロナ禍などの経済危機に対しても強い耐久力を示してきました。

キャッシュフロー経営を実践することで、企業は経営の健全性を保ちつつ、持続的な成長を目指すことができます。

次回からは以前に投稿した内容の大切な部分を再度アップしていく予定です。

 

ABOUT US
布川 昭文
中央大学経済学部卒業後、東証一部上場企業の建設会社に入社。支店経理、本社人事部で勤務。その後、会計事務所、シンクタンクにてスタッフ系業務全般及び調査・研究業務に携わる。シンクタンク時代には流通業の経理担当者向けのセミナー講師を定期的に務めた。また、2005年共著にて「経営計画・利益計画の立て方進め方(ISBN-10:4534039751)」執筆。 2021年 エースラボの理念「中小企業のパワーアシスト」に共感し参画。いままで様々な企業の業務改善に携わる。趣味で合唱をたしなみ、ベートーヴェンの第九をこよなく愛する。週末、ぶらぶらとドライブしながらの温泉巡りをすることもすき。