第21回「目からウロコがはぎ取れる!経営に役立つポイント」

〜財務体質を強くするバランスシート対策〜

こんにちは! エースラボの布川昭文と申します。

普段は「出張経理課長」として、契約企業様の日々の経理処理や毎月の状態把握に欠かせない月次試算表作成のお手伝い、さらには資金繰りや、資金調達に関わる支援業務を行っております。

これまでの経験をもとに今回から数回にわたり、

「経理業務に直接タッチしない社長さんでもここだけは知っておいてほしい」

「ここを押さえておくと経営が楽になりますよ」

というところをピックアップし、なるだけわかりやすく、簡略にお伝えしていきたいと思います。

今回から「財務体質を強くするバランスシート対策」を数回に分けてお伝えしたいと思います。

前回は「バランスシートとは何か?」について取り上げさせて頂きましたが、皆さんはしっかりと自社のバランスシートを見ていますか?

「損益計算書は理解しやすいけど、バランスシートはイマイチ分からないなぁ」という声を良く耳にします。

皆さんはいかがでしょう?バランスシートから目を背けていませんか(笑)。

前回も触れたようにバランスシートは「企業の財務状態」を表す大切な計算書であり、避けては通れません。

売上が好調で利益が出ていたとしても、現預金が非常に少ない状態だったらどうでしょう。

キモを冷やしますよね。損益計算書からは資金の状況は読み取ることはできないのです。

皆さんは「黒字倒産」という言葉をお聞きになったことはありませんか?

利益が出ていても手元資金が無くなれば企業は倒産してしまいます。

この辺のことはキャッシュフローの説明をする際に改めて説明したいと思います。

企業を継続させるためには利益も大切ですが、大切なのは「バランスシートを重視した経営」です。財務の強い企業はバランスシートを重視して経営を行っています。

バランスシートを重視するということは、企業が資産と負債の管理を慎重に行い、財務の健全性を保つために戦略的な意思決定を行っていることです。

では、実際に「財務を強くするバランスシート対策」について触れていきたいと思います。

財務体質を強くする

財務体質を強くするには、①自己資本比率の向上②負債の最適化③流動性の確保④資産の効率的運用⑤固定費の管理⑥収益性の向上があげられます。

自己資本比率の向上
・内部留保の強化:収益の一部を利益剰余金として蓄え、自己資本を増やすことで、自己資本比率を高める

負債の最適化
・長期負債の活用:短期負債よりも返済期間が長い長期負債を活用し、キャッシュフローの安定性を高める。長期負債は通常、金利が固定されているため、金利変動リスクも容易になります。

・借入の見直しと返済計画の最適化:高金利の借入を低金利の借入に借り換えたり、不要な借入を返済することで、利息負担を軽減し、財務の安定性を向上させます。

③流動性の確保
・キャッシュの確保:緊急時の支出に対応できるよう、適切な現金および現金同等物を確保します。これは、景気の変動や不測の事態に対する安全網となります。

・運転資本の効率化:売掛金や在庫の回転率を高めることで、運転資本を効率的に管理し、資金繰りが改善します。

④資産の効率的運用

・遊休資産の売却:利用されていない資産や収益性の低い資産を売却し、資産を現金化して流動性を高めるとともに、資産運用の効率を向上させる。

・設備投資の慎重な計画:設備投資を行う際には、収益性や回収期間を慎重に検討し、過剰投資を避けるようにします。

⑤固定費の管理
・コスト削減:固定費を削減することで、利益率を向上させ、バランスシートの強化につなげる。特に、不採算部門の整理や効率化を図ることが重要です。

⑥収益性の向上
・事業ポートフォリオの最適化::収益性の低い事業や非中核事業を整理し、高収益事業に資源を集中することで、全体の収益性を向上させます。

・価格戦略の見直し: 価格戦略を見直して、利益率を高める取り組みを行います。

これらの対策を通じて、企業はバランスシートの健全性を高め、長期的な成長と安定した財務基盤を築くことができます。

今回は自己資本比率を向上させるための具体的な対応策について、簡単に触れたいと思います。

自己資本比率を向上させる

利益の増加
コスト削減:効率的な運営やプロセスの改善により、コストを削減し、利益率を上げることができます。
売上の拡大:新規市場の開拓や新商品・サービスの導入により、売上を増やし、利益を増加させます。

②不採算資産の売却
・不動産や設備、不要な子会社など、稼働していない資産や不採算の資産を売却することで、資金を得て自己資本を増加させることが可能です。

③負債の削減
・借入金の返済を進め、負債を減らすことで自己資本比率が向上します。特に、長期借入金の返済を進めることが効果的です。
借入条件の見直し:金利条件や返済スケジュールを見直し、財務負担を軽減する方法もあります。

④利益剰余金の増加
・業績の向上により、企業が利益を留保することで利益剰余金が増え、自己資本の増加につながります。
・継続的な利益成長を目指し、営業活動やコスト管理を強化することが重要です。

次回以降で、他の項目をもう少し掘り下げていきたいと思います。

ABOUT US
布川 昭文
中央大学経済学部卒業後、東証一部上場企業の建設会社に入社。支店経理、本社人事部で勤務。その後、会計事務所、シンクタンクにてスタッフ系業務全般及び調査・研究業務に携わる。シンクタンク時代には流通業の経理担当者向けのセミナー講師を定期的に務めた。また、2005年共著にて「経営計画・利益計画の立て方進め方(ISBN-10:4534039751)」執筆。 2021年 エースラボの理念「中小企業のパワーアシスト」に共感し参画。いままで様々な企業の業務改善に携わる。趣味で合唱をたしなみ、ベートーヴェンの第九をこよなく愛する。週末、ぶらぶらとドライブしながらの温泉巡りをすることもすき。