第24回「目からウロコがはぎ取れる!経営に役立つポイント」

こんにちは! エースラボの布川昭文と申します。

普段は「出張経理課長」として、契約企業様の日々の経理処理や毎月の状態把握に欠かせない
月次試算表作成のお手伝い、さらには資金繰りや資金調達に関わる支援業務を行っております。

「経理業務に直接タッチしない社長さんでもここだけは知っておいてほしい」

「ここを押さえておくと経営が楽になりますよ」

というところをピックアップし、なるだけわかりやすく、簡略にお伝えしていきたいと思います。

まずは、最近少し気になった記事を目にしたので、それについて触れたいと思います。
「船井電機破産 負債総額469億円」。「船井電機」の名前を皆様も一度くらいは聞いたことがあるのでは無いでしょうか?
創業は1961年。トランジスタラジオなどで成長をとげ、2000年代にはデジタルAV機器で特に北米市場で強みを発揮した家電メーカーです。一時は「世界のFUNAI」とまで言われた企業です。破産申立_時点での従業員数は532人で、同日に全従業員が解雇されました。社員の方々にとっては寝耳に水状態だったかと思います。

私自身も遡ること13年前の2011年9月に、勤務していた会社が民事再生法の適用の申請をしました。負債総額248億円。まぁ、中々大変でした…。この話を書き出すと長くなるので、また機会があれば触れてみたいと思います。

船井電機は何が原因だったのでしょうか?まだ詳しい内容が明確にされていないのでなんとも言えませんが、単なる資金ショートによる倒産では無さそうな感じがします…。海外メーカーとの競争が激化して業績が悪くなってきて、創業者も亡くなり、出版社が株式公開買付を行い、その企業が脱毛サロンの企業を買収するものの、上手くいかずに撤退。無駄に資金だけが流出。その額は驚きの300億円。
この内容だけでも、何故?と思ってしまいます。東証一部に上場までしていた企業なのにガバナンスが全く効いていない感じがします。
自己破産にしても、取締役1名が単独で「準自己破産」の申し立てを行っています。準自己破産?なんて聞きなれない言葉なので、調べてみると「他の取締役の反対」があった場合に取られる手段となっております。この時点でも会社の方針は一本化していなかったことが読み取れます。その後もまだ不可解なことが続いていきます。今度は会長が「破産手続きを知らされていない」ことを理由に民事再生の適用を申請しています。
全く持って不可解な動きですね…。今後もっと色々なことが解明されていくかと思います。

今回はガバナンスの重要性」と「コーポレートガバナンスについてお届けします。

ガバナンスの重要性

◆ガバナンスとは
ガバナンス(Governance)は、組織や団体が目的を達成し、長期的に持続可能な成長を実現するための意思決定や管理の仕組みを指します。特に企業や政府、非営利団体などにおいて、ガバナンスの質はその成功や信頼性に直結するため、非常に重要です。

次にガバナンスが重要とされる理由を下記に記します。

1.目標達成のための透明性と効率性の確保
・適切なガバナンスは、目標達成に向けた明確な指針を提供します。
・組織内外での意思決定のプロセスが透明であることにより、関係者(ステークホルダー)の信
 頼を得られます。
・効率的な資源配分とリスク管理を可能にします。

2.リスク管理と危機回避
・ガバナンスの仕組みにより、リスクの特定、分析、対策が迅速に行えます。
・法的リスクや倫理的問題、財務リスクへの対処能力を高めます。
・組織がスキャンダルや失敗に巻き込まれるリスクを軽減します。

3.ステークホルダーの信頼構築
・ガバナンスがしっかりしている組織は、顧客、株主、従業員、地域社会などのステークホルダーからの信頼を獲得できます。
・信頼は組織のブランド価値を高め、長期的な発展の基盤となります。

4.持続可能性と社会的責任の実現
・環境・社会・ガバナンス(ESG)という概念の中で、ガバナンスは特に重要視されています。
・社会的責任を果たすための仕組みが整備されていることで、持続可能性が向上します。
・環境への配慮や人権尊重といったテーマへの対応が、競争優位性を生みます。

5.倫理的行動の促進
・ガバナンスは組織の行動規範や倫理基準の基礎を提供します。
・法律を遵守するだけでなく、高い倫理観を持った意思決定が可能になり、不正や不祥事の発生を抑制できます。

6.利害関係者の多様化への対応
・現代の組織は、国内外の多様な利害関係者と関わりを持っています。
・ガバナンスは、異なる価値観や期待を調整し、円滑な関係を構築するための重要な枠組みです。

ガバナンスは、組織の透明性、倫理性、効率性を高め、リスク管理や信頼構築に貢献します。健全なガバナンスを持つ組織は、持続可能な成長を遂げるだけでなく、社会全体に対しても良い影響を与えることができます。

コーポレートガバナンス(企業統治)

次に、「コーポレートガバナンス(企業統治)」について触れてみたいと思います。

◆コーポレートガバナンス(企業統治)
企業が透明性、公正性、責任を持って経営を行うための仕組みです。

具体例をいくつか示したいと思います。

1.独立した社外監査役の設置
目的:経営陣の暴走を防ぎ、外部からの視点で客観的な監督を行う。
具体例
 ・ソニーやトヨタでは、複数の社外取締役を採用し、取締役会の議論に独立性と多様性を持た
  せています。
 ・ソニーでは、取締役会の半数以上を社外取締役とすることで、経営の透明性を確保。

2.内部統制システムの構築
目的:企業内部の不正やリスクを未然に防ぎ、法令遵守を徹底。
具体例
 ・東芝は、不正会計問題の後、内部監査機能を強化し、社内通報制度(ホットライン)を拡充
  しました。

3.監査役や監査委員会の強化
目的:経営活動を監視し、不正行為や利益相反を防止。
具体例
 ・リクルートでは、監査役の権限を強化し、監査委員会が財務諸表の正確性や業務の適正性を    
  定期的に確認しています。また、監査役が取締役会に出席し、経営陣の意思決定をリアルタ 
  イムで監視。

4.役員報酬制度の透明化
目的:役員報酬を業績や株主価値向上に連動させ、公平性を担保。
具体例
 ・任天堂では、役員報酬を「基本報酬」と「業績連動報酬」に分け、報酬額の決定プロセスを
  公開しています。

5.株主との対話(エンゲージメント)
目的:株主の意見を経営に反映し、持続可能な成長を実現。
具体例
 ・ユニクロを運営するファーストリテイリングは、定期的に株主向け説明会を実施し、経営戦
  略や業績についての情報を公開。

6.多様性の推進
目的:取締役会の多様性を高め、多角的な意思決定を可能にする。
具体例
 ・資生堂では、取締役会に女性取締役を複数名配置し、多様な視点を取り入れています。

7.サステナビリティ関連の監督
目的:環境や社会課題への取り組みを経営に組み込む。
具体例
 ・三菱UFJフィナンシャル・グループは、取締役会にサステナビリティ委員会を設置し、ESG
 (環境・社会・ガバナンス)関連のリスクと機会を監督。

8.コンプライアンスプログラムの導入
目的:法令や規則を遵守し、不正行為を防止。
具体例
 ・花王では、社員全員に対して定期的なコンプライアンス研修を実施。

9.事業継続計画(BCP)の策定
目的:災害や危機発生時における事業の継続性を確保。
具定例
 ・NTTグループは、地震やサイバー攻撃に備えたリスクマネジメント体制を構築。

コーポレートガバナンスの実例は、企業の透明性、信頼性、持続可能性を高めるための具体的な取り組みです。これらの施策は、企業が変化の激しい環境で競争力を維持し、ステークホルダーの期待に応えるために欠かせないものとなっています。

などと原稿を書いていたら、大手銀行の貸金庫窃盗事件が発生。数ヶ月も経過してから頭取が謝罪をするというお粗末な対応…。唖然としてしまいました。

1年は早いですね。2024年も残りわずか。
いつも読んでくださりありがとうございます。来年もよろしくお願いいたします。


ABOUT US
布川 昭文
中央大学経済学部卒業後、東証一部上場企業の建設会社に入社。支店経理、本社人事部で勤務。その後、会計事務所、シンクタンクにてスタッフ系業務全般及び調査・研究業務に携わる。シンクタンク時代には流通業の経理担当者向けのセミナー講師を定期的に務めた。また、2005年共著にて「経営計画・利益計画の立て方進め方(ISBN-10:4534039751)」執筆。 2021年 エースラボの理念「中小企業のパワーアシスト」に共感し参画。いままで様々な企業の業務改善に携わる。趣味で合唱をたしなみ、ベートーヴェンの第九をこよなく愛する。週末、ぶらぶらとドライブしながらの温泉巡りをすることもすき。