オブジェクト指向から組織づくりを学ぶ
今回は、前回の「CXO」のお話しに引き続き、どうやって機能別の社長の分身ともいえる「組織」を作るか・・というお話しです。
ご存じの方もいらっしゃるかもですが わたくしたちエースラボが所属するエースユナイテッドグループでは事業会社を通じて ジュニア向けと法人向けのプログラミング教室を運営しています
そのプログラミングの考え方には「オブジェクト指向」というものがあります
なーんて書くと「うわ めんどくさ」と思われるかもしれませんが プログラミングについて実はシロウト同然の私が絶対わかりやすく書きますから どうぞも少しお付き合いください
「オブジェクト指向」を経営に組み込むときっと良いことがあると思いますよ
まるでレゴを組み立てるかのように めちゃくちゃシンプルに組織づくりができますから!
オブジェクト指向を簡単に言うと
「オブジェクト指向」はWebサイトの制作に使われるJavaScriptや元祖オブジェクト指向C++、日本生まれのRubyのほか 「AIづくりに最適な稼げるプログラミング言語」として人気の高いPythonなどが取り入れている、ソフトウェア開発手法です。
プログラムを「オブジェクト」と呼ばれる独立した部品に分けて設計するオブジェクト指向はプログラムの開発と保守が簡単だといわれています
もうちょっと詳しく
部品であるオブジェクトにはデータ(属性)とメソッド(操作)が含まれていて これにより現実世界の物事をモデル化することができます
例えば オブジェクト指向では「車」というオブジェクトを作成し その中に「色」や「メーカー」などの属性、「走る」や「停まる」などのメソッドを持たせることができます
これにより、車に関する操作を統一的に行うことができ プログラムの可読性と再利用性が向上します
・・・あーごめんなさい わかりにくいところもありましたね
やはり 経営者の皆さんには会社の経営になぞらえて説明するべきですね
オブジェクト指向を実際の経営にからめて説明します
あんまり総論的で抽象的なことを言っても仕方ないので オブジェクト指向を具体的に特徴づける4大用語「クラス」「カプセル化」「継承(インヘリタンス)」「多様性(ポリモーフィズム)」を経営になぞらえて説明してみます
きっとこの考え方を組織づくりに応用する 具体的なイメージがつかめるんじゃないかと思います
1,クラス
オブジェクトを生成するための設計図あるいはひな形に相当するものです
「クラス」の名の通りそれぞれのオブジェクトの役割に応じた「やること」が書かれています
会社で言えば「職務規定」「役職規定」みたいなものでしょうか?
例えば当社エースユナイテッドには一般企業で部長職に当たるGL (グループリーダー)という役職があります
GLの職務は当社の役職規定で
「CL(カンパニーリーダー)・CL補の戦略のもと担当部門の戦術を担当し、行動・成果に社内責任を負います。CL・CL補の指導のもとGL補の教育指導に当たります。」
と規定されています
どの部署のGLにも この規定(クラス)が適用され これに適合できない人は GLになれません
クラスから生成したオブジェクトの実体のことを「インスタンス」といいます
つまり 鈴木GL(仮名) 山田GL(これも仮名)といった実態のある存在 ということですね
当然 上司で社長格のCL(カンパニーリーダー) 役員格のCL補にも明確な規定(クラス)があります
2,継承(インヘリタンス)
同じ特徴を共有している関係を「継承」と呼びます。
あるクラス(スーパークラスと呼びます)の属性や手順を 新しく作ったクラス(サブクラスと呼びます)に継承させることができれば 一から書きはじめなくてもいいですよね
グループリーダー(GL)の下にGL補佐とか 係長格のチームリーダーなんていう名前のクラスを作ろうと思ったときには GLの規定とカブる部分は「GL規定の〇〇参照」と省略してOK
逆にグループリーダー(GL)の上にグループマネージャー(GM)とか作ろうと思えばそれも同じ要領でできてしまいます
GLがGMに昇格した時は、役職規定の共通部分は読み飛ばしてしまっても何の不都合もないわけです
言ってしまえばクラスを作る作業を省力化するテクニックなんですが クラスの継承がしっかりしていると 親子クラス間の共有部分がノリシロのような働きをして 組織全体に一貫性が出るんじゃないかと思います
3,カプセル化
安全のため 各オブジェクトの中身をカプセルで包んで外からは見えないようにすることです
とても重要な役割なのに決して外からは見えず ボンネットの中に隠れているクルマのエンジンはカプセル化していると言えますね
会社組織の中で 例えば営業が売上処理して請求書さえ送ってしまえば その後の入金管理・仕入代金の支払い・給与支払い・会計処理などなど・・・
他部署の社員が知らないお金に関することを一手に引き受けてくれる謎の集団 総務・経理部門はまさしくカプセル化の インカーネーション(具現化)と言えますね
上手なカプセル化のコツは 窓口(インターフェイス)がシンプルでほかのオブジェクトから見てアクセスしやすいことだそうです
組織じゃないですけど 仕組みがわからなくても楽しめるテレビは カプセル化の具体例ですが
その窓口であるリモコンは 4Kになってもあいかわらずゴチャゴチャしてて良くないですね
4、多態性(ポリモーフィズム)
異なる種類のクラスに同一の操作インターフェースを持たせる機能を多態性(ポリモーフィズム)と呼びます
多態性はいわゆる 「生物多様性」などの「多様性(ダイバーシティ)」とは多少意味合いが違います
オーケストラの演奏は 具体的なポリモーフィズムをイメージするのに手助けになるかもしれません
指揮者がタクトを一振りすると それが「演奏開始」の指示
この指示に従って 様々な楽器が楽譜に従って それぞれの旋律を 弾く 吹く 叩くなど それぞれの演奏法で奏で(クラス) すばらしいハーモニーを(プログラム全体の成果)実現します
多態性(ポリモーフィズム)が実装された企業では トップが朝礼で全員に
「今日もお仕事頑張りましょう」と業務開始を指示するだけで
それぞれが役職クラスや職務クラスに応じたやりかたで業務に邁進し それが素晴らしい成果を生むわけです
足のことは 足にまかせろ
プログラマで作家の藤本裕之さんが オブジェクト指向をたった一言で表した言葉です
実は人体も全てが大脳(トップ)の指示で動いているわけではありません
歩く時、その複雑なプロセスを大脳だけで制御しているわけではありません
みなさんもいちいち頭で考えなくても歩けますよね?
実は歩行は 大脳皮質-基底核ループおよび下位の脳幹 小脳 脊髄が階層的な制御をすることで実現されています
そう考えると オブジェクト指向プログラミングは 生物などが持つ自律的な仕組みを模倣することで 現実世界の物事をモデル化することができている ということなのかもしれませんね
組織の自律化にはオブジェクト指向が良いと思います
強くて柔軟で拡張性があり 勝手に成果が出る トップの気苦労が少ない自律的組織
まさしく理想の組織ですが 今ある組織をただ放ったらかしにしておいたら 勝手にそうなるわけではありません
トップが組織づくりにオブジェクト指向の考え方を応用してこそ それが可能になるんじゃないでしょうか?
同意してくださった方のために 沢田が考える 自律的組織づくりのために オブジェクト指向を応用するポイントを記しておきます
1)「クラス」・・・業務手順の明文化
それぞれの部署・役職が行うべき業務手順が明文化されオープンになっている
2)「継承」・・・核となる価値観の共有
全社共通の理念や行動規範が明文化されていて 共有できる価値観のものとに業務が行え 役職や部署ごとの職務内容にはノリシロがあり 昇格や異動後もリスタートが容易
3)「カプセル化」・・・情報防衛と利便性の両立
経理や総務などの間接部門はもちろん 経営部門など専門性と秘匿性の高い業務を行う部門の情報はしっかりと守られているが その窓口はオープンになっていて必要なサービスがいつでも受けられる
4)「多様性」・・・核となる価値観を具現化する個々のスキルを育成
全社共通の理念や行動規範のもとの指示を 現実のものにするための 社員個々のスキルを育成する仕組みがある
手続き型組織づくりとの決別
オブジェクト指向に対し プログラムの個々のアクションを一個いっこ順番に記述していくようなプログラミングのことを「手続き型」と呼ぶそうです
トップが一人ひとりの社員にあわせて個別の指示をだしていたり 部門ごとに別々の価値観に合わせて組織化されているような「手続き型」組織
もしあなたがこんな会社を運営していたら大変でしょうがないと思うんです
だってそれじゃあ 部門別・階層別にではなく 個人個人に指示をするから それだけでも大変なのに 同じ役職・職位でもやれることが全然違ったり 部門ごとの方針がバラバラだから 部門長同士が足を引っ張り合ったりするでしょうし
社員は自分の会社の成績がわからないのはもちろん 何をどうやったら評価されるのかもわからない 家の事情で勤務時間の短縮を申し出たいのに 社長の顔色をこわごわ伺うしかできず
仮に理念はあっても それを実現するスキル習得の機会もなく 個々が努力するしかない
たった一人の高スキル社員が抜けるとたちまち戦力がガタ落ち
もしもそんなだったら ホントに大変ですね
気になった方は
さすがに 上の状況にすべて当てはまる というひどい会社はないとは思いますが
クラス・継承・カプセル化・ポリモーフィズムというオブジェクト指向という観点から
皆さんの会社の現状と課題 さらに自律的組織づくりのために どうとりくむべきか?
沢田が考えるポイントにあてはめて考えてみるのはいかがでしょう
もちろん必要であれば いつでも私にご相談ください
2024年8月19日 改訂