メディア報道によると 地元東北のとある地元銀行が行員の発案で行う事業のなかに事業後継者向けの「帝王学スクール」があるそうです
皆さんはこの取り組みについてどう思われますか?
私の頭の中には クールポコの「な〜に〜〜っ やっちまったな!」が響き渡りました
(この銀行の所在地が 日本で京都府に次いで100年企業が多い という土地柄なので「まあしかたないか」とも思いますが)
本来的な意味での帝王学は 「帝国を治める者として学ぶべき学問」ということなんでしょうが ここで言う「帝王学」というのは 「世襲の経営者が学ぶべき心得」みたいなことを指すのでしょう
ちなみに世にいう「帝王学」の中身は大変あいまいで「帝王学」という言葉そのものも本場とされる中国にはなく 日本で作られたもののようです
実は私も34歳で親から会社を引き継いだ頃 取引先の先輩方から「帝王学を学ぶべき」なんてことを言われて なんか銀色の装丁をほどこされたハードカバーの帝王学の本を読んでみたことがあります
読後しばらくは 気持ちが良くなって 気位が高くなりましたが
その後もとに戻って 結局何にも残らなかったですね〜
本の中身が まあなんといいますか 抽象的なといいますか 言語化することが難しいこと(暗黙知)を むりやりこねくり回して ひねり出しているような中身なので たとえ読んでも実行に移すことが難しかったんだろうな と思います
私が読んだ「帝王学」の中身は 主に中国の古典「貞観政要」など 帝王とそれを「帝王たるものこうあるべき」と諌めて教育する いわゆる諫臣とのやり取りなどを日本風に読み下したものだったと記憶しますが・・・
あのとき読んだ帝王学の本は 読後30年近く経っても 役にたったという記憶が一切ありません
後に かの小室直樹(ソ連の崩壊を予言した政治学者)の「日本人のための宗教言論」だったかを読んでいたとき
「中国では権力者の力が大変強く 近臣はいかに機嫌を損ねず 帝を説得するかの術(阿諛;あゆ)に長けている必要があると言われている」
といったようなことが書かれていて
帝王学が 私にとってなんの役にも立たなかった理由に ようやく気が付きました
つまり帝王学の本が引用する「中国思想」は 社長や社長の息子が読むと 機嫌を損ねない程度に 著者に注意してもらえて「とっても気持ちがいい」ものなのです
おそらく本で学んだ帝王学を実践して その下に機嫌を損ねない程度の諫臣がいた場合
その諫臣にいくら何を言われても 大物ぶって「あいわかった」なんて言って 行動を改めなくても 全然OKなんですから それは気持ちいいでしょう
もしもトップが帝王学を学び その下に阿諛(あゆ)に長けた諫臣がセットになっているとしたら
「一見すると 風通しが良さげで その場は誰も損しない 上から下までほんわかと生ぬるい 組織」
が出来上がるんじゃないでしょうか??
私にはそんな組織が成長するとはとても思えないんですが もしかすると仕入先や金融機関にとっては とても扱いやすい会社になるんでしょうかね 絶対成長しないけど(しつこい)
私はそもそも 数十人規模の中小企業のトップが「帝王」なわけないじゃん と思います
くだんの地方銀行さんには申し訳ないのですが 私は後継者を自覚する人が若くして学ぶのでしたら「帝王学」なんかじゃなくて断然「経営学」だと思いますよ
いくら人心掌握ができても お金をはじめとする経営基盤のことがわからないと どこかで必ず致命的な判断ミスを犯しますからね
・・とここまで書いてきて 帝王学の本を読んだ私が全くピンとこなかった理由がわかってきました
おそらく 私も読んでみて 一時的に気持ちの良かった期間 何回か帝王学の中身を自分の会社で試してみたんだと思います
幸か不幸か 当社には帝王の相方となるべき「諫臣」が一人もおらず 全員から「なにやってんだ こいつ? 変なもんでも食ったか?」と完全スルーされたので 「帝王学」はな~んの役にも立たなかったんじゃないかと思います
「帝王」というのは 社長自分だけでなく まわりの社員も同じくそう思っていないと成り立たない存在というわけですね とほほほ・・
そんなわけで 本どころか 阿諛の英才教育を受けている銀行の方本人から 帝王学なんか学んだ日には いったいどんな会社になるんでしょうかね? と思ったちゃったんだからしょうがない
☆ これを書いたあと くだんの記事をあらためて もう一回読み返してみたら
「伝統や作法などを子どものうちから総合的に学び、事業承継を円滑にする『帝王学』スクール事業」と記述されていました
え? ええええ〜?? 子どものうちから??? しかも作法????
社長の子息だからって 子どものうちから人生を決められちゃうのは あんまりにもかわいそ過ぎませんか??
こっちのほうがより とほほほ ですね〜
日〇新聞の記者さんは 一体どんな気持ちでこの記事を載せたのでしょうか??