今回はいつもの流れは少しお休み。
「ピーター・ドラッカー」皆さんも一度くらいは名前を聞いたことがあるかもしれませんし、数多くの著書を執筆しているので、読んだことがあるという方もいらっしゃるかもしれませんね。
今回は、そんなピータードラッカーについて触れてみたいと思います。
経営学の父 ピータードラッカー
はじめに
ピーター・ドラッカー(Peter Ferdinand Drucker、1909年11月19日 – 2005年11月11日)は、オーストリア・ウィーン生まれの経営学者です。
「現代経営学」あるいは「マネジメント」という概念の発明者として知られ、「経営学の父」とも呼ばれています。
主な業績と影響
ピーター・ドラッカーが行った主な業績は下記のとおりです。
- マネジメントの体系化:それまで断片的であった経営に関する知識や経験を体系化し、一つの学問分野として確立しました。
- 目標管理(MBO)の提唱:組織目標と個人の目標を連動させ、個人の自主性と責任を高める目標管理制度を提唱しました。
- 知識労働者の概念:知識や情報を活用して価値を生み出す「知識労働者」の重要性を早くから指摘し、そのマネジメントのあり方を示しました。
- 顧客中心主義:企業の目的は利益ではなく、「顧客の創造」であると主張し、顧客価値の重要性を強調しました。
- 分権化の推進:大規模な組織においては、意思決定の権限を現場に近いところに委譲する分権化が重要であると説きました。
- 社会への貢献:企業は社会の一員であり、社会的な責任を果たすべきであるという視点を協調しました。
ピーター・ドラッカーの著作は、世界中の経営者やビジネスパーソンに大きな影響を与え、彼の思想は現代の経営学においても重要な基礎となっています。代表的な著書には、『マネジメント』、『現代の経営』、『明日への指針』などがあります。
彼は単なる経営学者としてだけでなく、社会学者、経済学者、歴史家、哲学者としての幅広い知識と深い洞察力を持っており、その思想は多岐にわたる分野に及んでいます。
自らを「社会生態学者」と称していました。
日本とも深い関わりがあり、日本の文化や経営にも関心を持ち、多くの示唆を与えました。彼の思想は、今日でも多くの日本の経営者に影響を与え続けています。
経営に役立つ多くの言葉も残しております。今回のその中から、私が独断と偏見で選んだものをお伝えしたいと思います。
企業を成長させる5つの質問
- 我々のミッションは何か?
- 存在理由の明確化:組織が何のために存在するのか、その根本的な目的や使命を問い直します。単なる利益追求ではなく、社会や顧客にどのような貢献をするのかを明確にすることが重要です。
- 普遍性と永続性:ミッションは、短期的な目標や戦略を超えた、組織の活動の根幹となる普遍的で長期的な指針となるべきです。
- 全員への浸透:ミッションは組織全体で共有され、すべてのメンバーが理解し、共感することで、日々の活動の方向性を定める羅針盤となります。
- 簡潔さと分かりやすさ:誰にでも理解できる平易な言葉で表現され、記憶に残りやすいことが重要です。
- 我々の顧客は誰か?
- 顧客の特定:組織が価値を提供しようとしている対象を明確に定義します。単一のグループとは限らず、複数の顧客層が存在する場合もあります。
- 顧客ニーズの理解:単に「誰か」を特定するだけでなく、その顧客が何を求めているのか、どのような課題を抱えているのかを深く理解することが不可欠です。
- 潜在顧客の考慮:現在の顧客だけでなく、将来的に顧客となる可能性のある層についても検討することが重要です。
- 顧客セグメンテーション:必要に応じて顧客を細分化し、それぞれのニーズに合わせたアプローチを検討します。
- 顧客にとっての価値は何か?
- 顧客視点の重視:組織が提供する製品やサービスが、顧客にとってどのような価値をもたらすのかを、顧客の視点から徹底的に考えます。
- 価値の具体化:機能や価格だけでなく、利便性、品質、信頼性、感情的な満足感など、顧客が重視するあらゆる側面から価値を定義します。
- 競合との差別化:自社が提供する価値が、競合他社と比較してどのように優れているのか、独自性は何かを明確にします。
- 価値の進化:顧客のニーズや市場の変化に合わせて、提供する価値を常に進化させていく必要があります。
- 我々にとっての成果は何か?
- 目標設定の重要性:組織の成功を測るための具体的な指標(成果)を設定します。単なる売上高だけでなく、顧客満足度、市場シェア、イノベーションの創出など、ミッション達成に貢献する様々な側面から成果を定義します。
- 定量的・定性的指標:数値で測れる定量的な指標と、顧客の声や従業員のエンゲージメントなど数値化しにくい定性的な指標の両方を考慮します。
- 成果の共有と進捗管理:設定した成果を組織全体で共有し、定期的に進捗状況をモニタリングすることで、目標達成に向けた意識を高めます。
- 説明責任:設定した成果に対する責任の所在を明確にし、達成度合いを評価する仕組みを構築します。
- 我々の計画は何か?
- 戦略策定:ミッションを達成し、設定した成果を実現するための具体的な行動計画を策定します。短期的な戦術だけでなく、長期的な戦略を描くことが重要です。
- 資源配分:計画を実行するために必要な人材、資金、時間などの資源をどのように配分するのかを決定します。
- 優先順位づけ:複数の計画が存在する場合、どの計画を優先的に実行するのか、その基準を明確にします。
- 柔軟性と見直し:市場や環境の変化に合わせて、計画を柔軟に見直し、必要に応じて修正していくことが重要です。計画は一度作ったら終わりではなく、常に進化し続けるものです。
これらの5つの質問に真摯に向き合い、明確な答えを導き出すことは、組織が持続的に成長し、社会に貢献していくための基盤となります。
ピーター・ドラッカーは、利益についても言及しております。中々興味深い内容ですので取り上げさせて頂きました。
「利益は目的でも目標でもない。条件である」
利益は組織が存続し、その使命を果たすために不可欠なものではあるが、それ自体が組織の活動の最終的な理由ではないという考え方を示しています。
- 利益は目的ではない
- 目的は顧客への価値提供:ピーター・ドラッカーは、組織の真の目的は顧客のニーズを満たし、価値を提供することにあると考えました。利益は、その結果として生まれるものであり、活動の原動力や最終的な目標ではありません。
- 利益至上主義の批判:利益を第一の目的としてしまうと、短期的な利益追求に走り、顧客をないがしろにしたり、倫理的な問題を無視したりする可能性があります。これは、長期的な組織の成長や社会からの信頼を損なう可能性があります。
- 事例:例えば、ある製薬会社が「利益を最大化する」ことを唯一の目的とした場合、安全性よりも利益を優先して新薬を販売したり、不当な価格設定を行ったりする可能性があります。しかし、真の目的が「人々の健康に貢献する」であれば、安全性や倫理観を重視した活動を行うはずです。
- 利益は目的ではない
- 目標は成果の具体的な指標:目標は、組織が達成すべき具体的な成果を示すものです。売上高、市場シェア、顧客満足度などが目標となり得ます。利益は、これらの目標を達成するための重要な指標の一つではありますが、それ自体が具体的な行動を促す目標にはなりにくいです。
- 利益目的の曖昧さ:「利益を増やす」という目標だけでは、具体的に何をすれば良いのかが分かりません。どのような製品を開発するのか、どのような顧客層にアプローチするのか、どのようなコスト削減を行うのかといった具体的な行動目標が必要です。
- 事例:「来期、利益を10%増加させる」という目標だけでは不十分です。「新製品Aの販売数を〇〇個にする」「既存顧客の平均購入単価を〇〇円にする」「コストを〇〇%削減する」といった具体的な目標を設定し、その結果として利益の増加を目指す必要があります。
- 利益は条件である
- 組織存続の必要条件:利益は、組織が事業を継続し、成長していくために不可欠な条件です。利益がなければ、従業員への給与支払いや新たな投資、研究開発などができなくなり、最終的には組織は立ち行かなくなります。
- 活動の持続可能性: 利益は、組織が長期的に顧客に価値を提供し続けるための「必要条件」です。十分な利益を確保することで、組織は変化に対応し、新たな価値創造に取り組むことができます。
- 健全な組織運営の証: 適切な利益を上げていることは、組織が効率的に運営され、顧客から価値を認められている証拠とも言えます。
- 事例:企業が十分な利益を確保できていなければ、新しい技術を開発したり、従業員の教育に投資したりすることができません。その結果、競争力を失い、顧客への価値提供も低下し、最終的には事業の継続が困難になります。
まとめ
ピーター・ドラッカーが「利益は目的でも目標でもない。条件である」と述べたのは、組織は顧客への価値提供という明確な目的を持ち、それを達成するための具体的な目標を設定し、その結果として得られる利益を組織存続と更なる価値創造のための必要条件として捉えるべきだという考え方を示唆しています。
利益は、組織の活動の「結果」であり、「手段」であり、「必要条件」であって、「究極の目的」ではないのです。
最後に著書『経営者の条件』の中で、「成果をあげる五つの能力」を挙げており、これらは個人の能力であると同時に、チームにおいても重要な貢献要素となります。
チームメンバー一人ひとりがこれらの能力を発揮することで、チーム全体の成果が向上すると述べています。
以下に、それぞれの能力がチームへの貢献にどのように繋がるのかを取りまとめます。
- 時間を管理し、時間を創造する
◆チームへの貢献- 効率的なタスク遂行:チームメンバーが自身の時間を効果的に管理することで、タスクの遅延を防ぎ、プロジェクト全体の進行をスムーズにします。
- 無駄な時間の削減: 会議の効率化、不要な作業の排除など、チーム全体で無駄な時間を削減する意識を持つことで、より多くの時間を重要な活動に充てられます。
- 緊急性の低い重要な仕事への着手: 時間を意識的に作り出すことで、日々の業務に追われるだけでなく、チームの長期的な成長やイノベーションに繋がる重要な仕事に取り組む余裕が生まれます。
- 期日厳守の徹底: 各メンバーが時間管理を徹底することで、チーム全体の成果物や提出物の期日遅れを防ぎ、信頼性を高めます。
- 貢献に焦点を合わせる
◆チームへの貢献- 共通目標への意識向上: 各メンバーが「何がチームの成果に繋がるのか」を常に意識することで、個々の活動がチーム全体の目標達成に貢献するようになります。
- 役割分担の明確化と責任感の向上: 貢献すべき領域を明確にすることで、メンバーは自身の役割に責任を持ち、主体的に行動するようになります。
- 連携の強化: 貢献という共通の視点を持つことで、メンバー間の協力や情報共有が促進され、チームワークが向上します。
- 成果志向の文化醸成: 個々の活動が具体的な貢献に結びついていることを意識することで、チーム全体が成果を重視する文化へと発展します。
- 自他の強みを生かす
◆チームへの貢献- 得意分野での活躍: 各メンバーが自身の強みを活かせる役割を担うことで、最大限のパフォーマンスを発揮し、チーム全体の生産性を高めます。
- 弱点の補完: 他のメンバーの強みを理解し、互いに協力し合うことで、個々の弱点を補い合い、チーム全体の能力を底上げします。
- 多様性の活用: 異なる強みを持つメンバーが集まることで、多様な視点やアイデアが生まれ、より創造的で効果的な問題解決が可能になります。
- 人材育成: 互いの強みを学び合い、刺激し合うことで、チーム全体のスキルアップや個々の成長を促進します。
- 最も重要なことに集中する
◆チームへの貢献- 優先順位付けの徹底: チーム全体で取り組むべき課題やタスクの優先順位を明確にし、最も重要なことにリソースを集中させることで、効率的に成果を上げます。
- 集中力の維持: チーム全体が目標を共有し、重要な課題に集中することで、不要な作業や中断を減らし、生産性を高めます。
- 決断力の向上: 何が最も重要かを明確にすることで、迅速かつ的確な意思決定が可能になり、プロジェクトの停滞を防ぎます。
- 目標達成への推進力: 重要な課題に集中することで、チーム全体のエネルギーが一点に集約され、目標達成への推進力が高まります。
- 成果があがる意思決定をする
◆チームへの貢献- 質の高い意思決定: 情報を共有し、多様な意見を考慮した上で意思決定を行うことで、より質の高い、成果に繋がる判断が可能になります。
- 迅速な意思決定: 必要な情報を適切に収集し、遅滞なく意思決定を行うことで、変化への対応を迅速にし、機会を逃しません。
- 実行力の向上: 意思決定のプロセスにメンバーが参加することで、決定内容への理解と納得感が高まり、実行段階での協力と責任感が向上します。
- 学習と改善: 意思決定の結果を振り返り、成功と失敗から学ぶことで、チーム全体の意思決定能力が向上し、より良い成果を生み出すことができます。
これらの「成果をあげる五つの能力」は、個々のメンバーが意識して行動することで、チーム全体のパフォーマンスを向上させ、組織の目標達成に大きく貢献します。チームリーダーは、これらの能力の重要性をメンバーに伝え、育成を支援する役割が求められます。
私が、ピーター・ドラッカーの名前を初めて知ったのは、宮城大学初代学長の野田一夫先生から教えられた時でした。ピーター・ドラッカーを一番最初に日本に紹介したのは野田先生なのです。
著書「現代の経営」の日本語タイトルは野田先生が命名されています。講演会への移動中などご一緒させて頂いた際に、アメリカでピーター・ドラッカーと交流した時のことなどを良く話してくださいました。
野田先生が所長を務めていた研究所に、会計事務所の一員として毎月伺っていた時、「うちに来ないか?」と声をかけてくださったことは、遠い思い出です。その後、人生においてプラスになった、様々な経験を積むことができました。もっと多くのことを先生から学びたかったと思う今日この頃です。
今回も最後までお読みいただきましてありがとうございました。