「あ〜・・・ 僕がこうやっている間も、社員は働いているんですよね。・・申し訳ないなぁ・・」
友人から誘われた平日ゴルフのラウンド中、その社長は何回かそう言ってため息をつきました。
年の頃は30半ばのその2代目社長さんは、昼食中ふと会社経営の話になった時にこうおっしゃいました。
「僕はとにかく社員の喜ぶ顔が見たいんです」
確かに人の喜ぶ顔を見るのはとても楽しいことですよね。
私は知る人ぞ知る料理好きです。
毎週土日のお昼と夕ご飯を創るようになってもう25年近く経ちます。
いまでは愛用の包丁と鍋さえあれば、肉でも魚でも野菜でも大抵のものはおいしく作れる感じです。
基本和食中心ですがコロッケとか、ピッツァなんかも得意ですよ。
でももともと若い頃は料理なんて一切やったことがなく、学生時代も外食か、お金がなくなれば、(これだけはできた)炊きたての白ごはんに冷たいままのレトルトカレーやサバ味噌缶をぶっかけてきた男です。
でもそれが30代前半のある時、仕事の先輩からすすめられて、家内と当時4歳だった娘のために茹でたスパゲティに(温めた)缶入りのミートソースを作ってみたところ、、芽生えてしまいましたね。
娘が口のまわりを赤くしてニコニコしながら「おいしいね」と言ったその瞬間に。
他にも、ご老人に席を譲った時、なにがしかの募金をした時、コンサルの提案が受け入れられた時。
相手が喜んでくれる姿を見るといつも「生きててよかった」と感じます。
だからその社長さんが「社員の喜ぶ顔をみたい」、という気持ちはよくわかります。
でもね、最近年をとったせいか「なんかそれも違うのかな?」という気持ちになっています。
たとえば昔、会社の玄関やトイレ掃除を始めた時。
最初はわざわざみんなが出社するときをみはからってやっていたんです。
そう、社員が喜ぶ姿が見れるかと思って・・
でも、そんな姿が見れたのはほんの数日だけ。
そのうち、みな挨拶もせずに私の前を通っていくようになりました。
期末賞与を手渡しにしてみたこともあります。
困った顔の社員はいましたが、嬉しそうな顔をする人はいませんでした。
それで段々と分かってきましたね。
「喜ぶ顔を見たい」のはこっちの都合で、相手にはなーんの関係ないってことが。
「人が喜べば別にその顔は見る必要なし。」
とはいえ、人を喜ばせたいのも、つまるところエゴだと思います。
なので、人に喜んでもらえると信じたことをやって、後の事は相手におまかせ。
それが一番いいな、と考えているんですがいかがでしょう。
ちなみに件の若社長はプライベートゴルフにも関わらず、フロントで社名入りの領収証をしっかりもらっていきました。
・・それじゃ社員は喜べないよね(苦笑)