No,36_新作 ようこそ経営基盤のある世界へ:お金まわり編 実録!ビフォー・アフター体験ツアー

経営基盤がない会社・ある会社ってどういうこと?

前回は概論の第2弾として 私たちが提唱する「経営基盤」がない世界、「ディストピア(暗黒世界)」「経営の最果て」ともいえる世界について書かせていただきました。

経営者にとってはなるだけ見たくない、身の毛もよだつ世界でしたね。

ここでいったんそんな世界から私たちを救ってくれる経営基盤が何かということを復習しますと

・事業活動を支える土台となる、人材、財務、組織

ということでしたね。

この経営基盤がしっかりしていれば、事業の変動にも柔軟に対応でき、長期的な成長を実現できるというわけ。

「ない世界」からスタートした私だから伝えられる 経営基盤の大切さ

もし現状あなたが経営基盤のない世界にいらっしゃると、経営基盤のある世界はどうやって行くのか分からない「遠い世界の話」に聞こえるかも知れませんね。

しかし、そんなことはありません。

繰り返しお伝えしていますが、実際に私は経営基盤のない自分の会社を、さまざまな経験を経て、小さいながらも経営基盤のある会社にすることができました。

そして現在は十数社の顧客企業の、経営基盤作りのお手伝いをしています。

そこで今回から数回にわたり、その遠い世界へのガイド役として自らの体験を、前回までの「経営基盤のある世界」と「無い世界」の事例にをベースに、「お金まわり」「業務・人事まわり」「将来の展望」の順にそれぞれビフォアアフターと、道順をお伝えしていこうと思います。

体験を書くので少し長いシリーズになると思いますが、大切な話ですのでどうぞお付き合いください。

ではまず大切な「お金まわり」が経営基盤でどうなるのか?これから一緒に見ていきましょう。

お金まわり1 「入金」のビフォアアフター

・症例 売上金の入金が予定通りに入らず、支払いの時にあわてることがある。

ビフォア 経営基盤がない世界では・・・

ミカド電装商事株式会社(以後当社)の場合、「予定通り入らない」はありませんでした・・・だって入金予定そのものを知っている人がだれもいないから(ぎゃふん)。

ホントの話、上から下まで入金予定を正確に把握している人も、把握するためのしくみもまったくのゼロ(恥)。

たぶん当時の大先輩の総務部長が、主要取引先の支払い条件くらいは把握していたんだと思いますが、実際に管理していた形跡があったのは、支払い予定と現預金のみ。

当社の支払いは約束手形で行っていました・・・ここで約束手形になじみのない方に解説しますと・・・

約束手形というのは取引銀行から手形帳(一冊400円くらい)という細長い紙の束を買ってきまして、その一枚に支払い金額といついつまでに支払いますよという、決済期日を書き込み、社判と銀行の届出印を押した、自家製のお札みたいなものです。

・受け取り側はその手形を自分の取引銀行に持ち込み、期日になると受け取り側の銀行は、支払い側の銀行にお金を請求します(これを取り立てといいます)。

・支払い側の銀行は、手形を発行した会社の口座から現金を引き出し、受け取り側の銀行に送金。

・これでめでたく支払いは終了するのですが、その時支払い側の銀行口座にお金がないと、支払いはされず、これを「不渡り」といいます。

・この不渡りを2回やっちゃうと銀行から取引を停止され「倒産」ということになってしまいます。

当社も倒産はいやなので(あたりまえ)、手形決済日前に現預金が足りない時は、お客様から支払われた手持ちの期日前約束手形から、必要分をチョイスして銀行に持って行き「手形割引」で現金化。

☆また分からない言葉が出てきたかも知れません。手形割引(てがたわりびき)を説明しますと、支払期日が到来前の約束手形を、銀行に持って行って、手数料を払って換金すること、まあ平たく言えば手形を担保にした借金の一種ですね。

本来少なくとも三ヶ月先までの入金予定は把握しておくべきで、こんなじゃほんとダメなんですけど、幸いなことに当社の場合翌月現金で払っていただける優良な取引先(某電力会社さん)のおかげで手元資金には多少の余裕があり、なんとかやりくりできたのだと思います。

それにしてもだいぶ締まりのない管理で、それゆえだいぶ緊張感のある、リスクの高い資金状況だった、と今は思います。

アフター 経営基盤がある世界では・・・

当社の入金・支払いが現状どうなっているかといいますと

お客様からの入金予定日がすべての売り上げに紐付いており、仮に予定日に入金しなかった場合は、即営業部に一斉メールが回るようになっています。

メールを受け取った担当者は原則24時間以内に、お客様に確認の電話を入れて未入金であることを連絡。

大抵は先方の社内の連絡ミスなどですから、早ければ即日、遅くとも翌月には払ってもらえます(与信管理もけっこうしっかりやっているせいか、この方式にしてから回収不能は発生していません)。

支払いは手形からすべて現金払いに切り替わっていて、支払手形の決済を心配する必要もなく、手元資金・借入枠も必要にして十分なので、総務責任者が代替わりしてから毎月つけていた資金繰り表もだいぶ簡単なもので十分になりました。

経営基盤がある世界への道のり

では一体どうやって私たちが経営基盤のある世界にたどり着いたかといいますと・・・

入金管理では、顧客台帳に「支払い条件」欄があったものの、ほとんどが空欄でした。そこで、全てのお客様に「お支払い条件の確認」ハガキを送ることを提案したところ、ベテラン社員から猛反対されました。

「そんな失礼なことしたら、お客さんに失礼だ!怒られる。」というのがその理由。

たしかに下請け孫請けの業者の身分ですから、お客様の機嫌を損ねないことに神経を使ってきた彼らの気持ちも分からないではありません。

「大丈夫! 皆さんがいつもへこへこしているこわ〜い発注担当の人じゃなくて、優しく几帳面な経理の人あてに送るから。

・・・そもそもさぁ、いつ払うか聞いたら怒るような会社なんてあったら、それもうお客じゃないよね」

とベテラン社員なだめすかし、全取引先宛にハガキを発送。

当たり前のことですが、回答率は100%

さっそく、汎用の販売管理ソフト(たしかPC98シリーズ用のPCAのものだったと記憶してます)を入手し、支払い条件を台帳データに反映、総務部で入金予定を起点にした資金繰りをしてもらうことにしました。

数年後500万円ほどかけて作った基幹システム(おおげさ)「ミカドネット」では、営業担当者各人が受注伝票を入力、売り上げまで責任を持って行うことに。

そして先ほどお伝えしましたように、予定日に入金しない売り上げには即アラートが出ますので、営業担当者が責任を持って対応、という完成形になりました。

次に支払いですが、社長を引き継いで一番緊張したのが、支払(約束)手形の発行です。

先代の社長(父ですね)は、大変度胸があり盟友の総務部長(当時)に、銀行印と手形帳を丸預けしてました(といいますか実印もです)。

私も新任の総務部長も、当然そんな度胸はありませんから、総務部長が手形帳、私がはんこをそれぞれ管理することにしました。

「アメリカ合衆国の核ミサイルは、大統領と国務長官がそろわないと発射できない」と聞いたのをヒントにしました。

具体的には、総務部長がチェックライターで手形に金額と期日を書き込み、私がはんこを押す、という流れです。

これでだいぶ双方の心の負担は減りましたが、やはり決済日のことが気になります。

その数年前に入会していた「倫理法人会」という勉強会でも「支払いは早く」と教わっていましたし「いっそのこと現金払いにしてしまおう」と決心しましたが肝心の現金が足りません。

先ほど書いたとおり、くだんの電力会社以外のほとんどのお客様からの支払いは、建設業の商習慣通り、約束手形払いだったからです。

中には「翌々月120日」などという、売り上げから入金まで180日もかかるものまでありましたから、手元現金ではとても払うことができません。

そこで地元のメインバンクに相談したところ「お客から受取った約束手形を全部預けてくれれば、それを担保に必要分を短期でお貸しします」とのお言葉。

受取手形の束を自社の金庫に持っているのも常々気持ち悪く思っていたので、さっそくお言葉に甘えることにしました(今は信用が増え資金調達の大半が短期から長期借り入れに切り替わってますが、当時はとてもありがたかったですね)。

現在はすべての支払先に、月末締め翌25日の現金払いとすることができました。

1000円だろうが数億円だろうが、みな一緒です。

私にとって現金払いのメリットはいろいろありますが、いくつかあげますと

・支払手形の管理が一切不要、基本ネットバンキングで支払っているので、小切手帳も手元現金用以外には使わない。

・手元にある現預金は当月支払い分以外は、ほとんどがフリーキャッシュなのでシンプルに管理できる。

・仕入れ先から「払いの良いお客」として扱われ、良い情報が入ってくるのも早い。

・借り入れにかかる金利は、メインの仕入れ先が自主的に制度化している割戻金(リベート)で相殺され、実質負担なし。

なによりも経営者がいつも「はればれ」とした気分でいられる、というのが現金払いの良いところだと思いますね。

え? 手形帳はその後どうなったか、ですって?

手形帳は二度と使えないように、シュレッダーにかけてしまいましたよ。

相棒の総務部長と二人でね。

今回のまとめ

私が体験した経営基盤のお金まわり

経営基盤がない世界

・入金予定を正確に把握している人も、把握するためのしくみもゼロ

・支払いは約束手形(自家製のお札)

・資金が足りなくなりそうになると 手形割引(受取手形を現金化)

つまりすべてが受け身

経営基盤のある世界

・顧客毎の支払い条件はすべて把握

・予定通り入金されなければ営業が即調査

・最長でも翌月には支払われる

・支払いは100円でも1億円でもいつもニコニコ末締め翌月現金払い

・支払いに必要な現金は計画的な借入金でいつも必要十分

さて次に、「現物と帳簿の不一致」について書こうと思いましたが、気力と体力がつきましたので、また来月とさせていただきます。

どうぞお楽しみに!

☆「支払いは早く」に違和感を持った方も多いと思います。「早くもらって遅く払う」という従来の経営鉄則に反しますからね。でも現在の私はそうやって手元に長く現金を持っているのは、サッカーでいうところの「ボールを持たせられている」状態だと考えています。遅く払おうがなんだろうが行き先はすでに決まっていて、それをコストを払って管理させられている、と感じるわけです。

以上